明 細 書
パイプ材の保定具 技術分野
本発明はパイプ材の収納 *搬送に使用される保定具に係り、 特に横置き整列状 態で多段に積重ねられた複数本のパイプ材の各段間および上下両端に配設されて パイプ材の荷姿を一定に保つ保定具を、 パイプ径の大小に対応調節可能にしたも のである。 背景技術
パイプ材を整列状態にして収納 ·搬送する保定具として種々の型式のものが提 案されている。 例えば、 公表特許公報平 3— 505077号には、 図 7に示すよ うにパイプ材(1)の載置部材として上下両面に所定間隔で円弧状の凹部 (2) を形成してなる長尺の成形体(3)あるいは、 前記凹部 (2)を有するプロック 状の成形体(4)を中空構造とし、 この中空部分に長尺の帯状部材(5)を貫通 させ、 所定段数積層された前記成形体(3)あるいは (4) と帯状部材 (5)の 組合わせ構造体を、 帯状部材(5)の両端で上下方向に挿通したセッ トボルト ( 6)で緊締固定されるパイプ材の保定具(7)が提案されている。
前記保定具(7)を使用することによって、 複数本のパイプ材 (1)は整列状 態を保持したまま収納あるいは搬送され、 擦れ合いや抜け出しによるパイプ材 ( 1)の破損が防止される。 発明の開示
図 7に示す保定具 (7)では、 成形体(3)あるいは (4)の上下両面に形成 されているパイプ材 (1)の位置決め固定用の凹部 (2)が一定の曲率半径で変 更不能であり、 また、 隣接する凹部(2)間に一定の離間距離が確保されている ため、 保定しょうとするパイプ材 (1)の外周面の曲率半径が凹部(2)の曲率 半径と正しく一致していないと、 凹部 (2)に対するパイプ材(1)の嵌まり込 み姿勢が不安定になり、 パイプ材(1)に挾持不良に起因する擦傷の発生や抜け
落ち等の品質欠陥が発生する危険性が大きくなる。
本発明の目的は、 パイプ材の径変化とパイプ材の横並び本数の変更に共に対応 可能な保定具を提供することにある。
前記課題を解決するため本発明の保定具は、 横置き整列状態で多段に積重ねら れた複数本のパイプ材の各段間および上下両端に配設されてパイプ材の荷姿を一 定に保っためのパイプ材の保定具において、 前記パイプ材の外周面と当接する左 右一対の傾斜部を両端に有する当接支持面と、 この当接支持面と隣接した前後両 側壁に形成され前記パイプ材の軸線方向と直角な水平方向に延在した凸条または 凹溝からなる係合部位と、 前記一対の傾斜部の中間に形成されスぺーサ部材を介 設可能な分割面とを有する左右 2分割構造の保定具本体を 1単位として、 左右方 向に複数単位で配列された前記保定具本体と、 左右方向に隣接する保定具本体の 各端部間に配設され、 かつ前記係合部位と隣接した開口部を有するプレート状部 材と、 前記複数単位の保定具本体の左右両端に配設され、 かつ両端の保定具本体 の前記係合部位と隣接した^口部を有するクランプフレームと、 前記プレート状 部材およびクランプフレームの各開口部を貫通し、 かつ前記保定具本体の前後の 係合部位にそれぞれ係合し、 両端部は前記クランプフレームに係止された一対の パー部材と、 上下両端に位置する複数単位の保定具本体の両端の前記クランプフ レームを、 上下方向に互いに緊締する緊締手段とを有する。
保定対象であるパイプ材の管径が変わった場合、 保定具本体の分割面にスぺー サ部材を選択的に介設することにより、 管径の大小変化に対応できる。 また既に 介設したスぺーサ部材を寸法の異なる他のスぺーサ部材に交換することにより一 層広範囲な管径に対応可能である。 従ってパイプ材に働く締付け圧力を一定の水 準に維持し、 不安定な嵌まり込みに起因する擦傷の発生や抜け落ちを防止できる 。 また横並びにするパイプ材の本数を変更する場合は、 その本数に合わせて保定 具本体の配列数を増減する。 本発明は中実棒材の保定にも応用可能で、 この意味 で本発明でいうパイプ材には中実棒材も包含されるものである。
保定具本体の分割面にスぺーサ部材を選択的に介設可能なので、 パイプ材の 管径の変化に対応してパイプ材を確実安全に保定することができる。 また保定具 本体の配列数を簡単に変えることができるので、 橫並びにするパイプ材の本数の
変更に容易に対応できる。 図面の簡単な説明
図 1 (A)は本発明に係る保定具の全体構造を説明する分解斜視図、 図 1 (B ) はスぺーサ部材の斜視図、 図 1 (C)はプレート状部材の斜視図、 図 1 (D) 及び図 1 (E)は保定具本体側に設けられた係合部位と、 これに係合するパー部 材の横断面図。
図 2 (A)は保定具本体とスぺーサ部材の第 1の具体例を示す斜視図、 図 2 ( B)はバー部材とクランプフレームとの接合部の斜視図、 図 2 (C)は保定具本 体とスぺ一サ部材の第 2の具体例を示す斜視図。
図 3 (A)は保定^¾本体の第 3の具体例を示す斜視図、 図 3 (B)は保定具本 体の第 1の具体例を示す図 2 (A) と同様の斜視図。
図 4 (A)は保定具本体とスぺーサ部材の組合せ状態を説明する平面図、 図 4 (B)は保定具本体とスぺーサ部材の組合せ状態を説明する正面図、 図 4 (C) は、 保定具本体の側面図。
図 5 (A)乃至図 5 (C)はパイプ材の管径の変化に対応して幅寸法を変化さ せたスぺーサ部材と、 このスぺーサ部材を挾持する保定具本体の正面図、 図 5 ( D)は、 スぺーサ部材の斜視図。
図 6は組立状態の保定具の正面図。
図 7はパイプ材保定具の従来例を説明する正面図。 発明を実施するための最良の形態
以下、 図 1乃至図 6を参照しながら本発明の具体例を説明する。
第 1実施例においては図 1及び図 2に示すようにパイプ材 (1)の保定具 (1 0)は、 保定具本体 (15A) (15B)、 プレート状部材(16)、 クランプ フレーム ( 17 )、 バー部材 (18)並びにセッ トボルト ( 19 ) とナッ ト ( 2 0)を組合わせることによって形成されている。 保定具本体( 15 A) ( 15 B ) 間のスぺーサ部材 (25)は選択的に使用するもので、 図 1や図 2等に図示は するが第 1実施例では使用しないものとして説明する。
より詳細に説明すると、 保定具本体 (15A) ( 15 B)の上面と下面には、 パイプ材 (1)の挾持部位として対向配置された 2つの傾斜部 (11 A) (11 B)を有する当接支持面 (12)が形成されており、 当接支持面 (12) と直交 する当該保定具本体 (15A) (15B)の前後の端壁面には、 図 1 (D)又は (E)に示すように、 長手方向をパイプ材 (1)の軸線方向と直角な水平方向に 延在させた状態で、 後記位置決め用バー部材 (18) との係合部位 (14)が形 成されている。 この係合部位 (14)は、 図 1 (D)のような凸条か、 あるいは 図 1 (E)のような凹溝とする。
保定具本体 (15A) (15B)は、 傾斜部 (11 A) (11B)の下端から 水平に延びる当接支持面 (12A)の中央部分で保定具本体そのものを縦向きに 分割することによって、 保定具本体 (15A) と (15B)の間の分割面に、 後 記スぺーサ部材 (25)を間挿可能にしている。
2個 1組で対設された保定具本体 (15A) (15B)からなる保定具 (10 ) の間には、 位置決め捕助部材として後記バー部材 (18)挿通用の開口部 (2 2)を具えた図 1 (C1)又は (C2)のプレート状部材 (16)が配設されて いる。 保定具 (10)の端面には図 2のように横方向に延在した凹所 (21)が 形成され、 この凹所 (21)にプレート状部材 (16)が嵌合するように構成さ れている。
そして、 このプレート状部材 ( 16) と交互配置で複数個を 1組として整列配 置している保定具本体 ( 15 A) (15B)の内、 最外端に位置する保定具本体 の端面の凹所 (21) と面当たり状態で左右一対にクランプフレーム (17)が 対向配置されている。
クランプフレーム (17)には後記パー部材 (18)挿通用の開口部 (23) が設けられており、 また、 当該クランプフレーム (17)の外端面には、 後記セ ッ トボルト (19)の下端部および中間軸部の係止手段として、 下方に屈曲した 左右一対のフック (24)が設けられている。 このフック (24)は、 最上段以 外のクランプフレーム (17B)に設けられており、 最上段のクランプフレーム (17A)の外端面には、 後記セッ トボルト (19)の挿通孔 (26)を開口さ せたガイ ドプレート (27)が取付けられている。
パー部材 (18)は、 横並びにするパイプ材 1の本数に対応した数で一列に配 列された保定具本体 (15A) (15B) と、 その間に間挿されたプレート状部 材 (16) とを、 2個 1組のクランプフレーム (17A) と (17B)の間に位 置決め固定するための位置規制部材であって、 長尺な型鋼または棒鋼から製作さ れる。 図示例では図 1 (A) (D)のようなコ字型鋼や図 1 (E)のような角棒 鋼から製作されている。 バー部材 (18)の長さは、 横並びにするパイプ材 (1 ) の本数に応じて予め切断して準備しておく。
パー部材 (18)の横断面形状は、 保定具本体 (15A) (15B)の前後の 端壁面に設けられた係合部位 (14)の形状、 クランプフレーム (17) (17
A) (17B)に設けられた開口部 (23)の形状、 およびプレート状部材 (1 6)に設けられた開口部 (22)の形状と嵌合関係をなすように構成されている 。 すなわち、 図 1 (D)のように係合部位 (14B)が凸条であればバー部材 ( 18)を当該凸条の外側を覆う形状のコ字型鋼とし、 図 1 (E) に示すように係 合部位 (14A)が凹溝であればパー部材 (18)を当該凹溝内に嵌合する角棒 鋼とする。 バー部材 (18)は保定具本体 (15A) (15B)の側方にはみ出 たプレート状部材 (16) とクランプフレーム (17 A) (17B)の開口部 ( 22) (23)に嵌合挿通され、 その両端部がクランプフレーム (17A) (1 7 B ) の外側でプライヤーなどの手動工具により横方向に外広がりに屈曲され、 これにより保定具本体 (15A) (15B)、 プレート状部材 (16)およびク ランプフレーム ( 17 A) ( 17 B)を一体化する。 バー部材 (18) の両端は 、 パイプ材 1の荷積現場で保定具本体 (15A) (15B)を組合わせる場合は 前述のように屈曲させるのが最も簡便であるが、 保定具本体 (15A) ( 15 B ) を予め工場で組合わせる場合は溶接などでクランプフレーム (17A) (17
B)に結合することもできる。
プレート状部材 (16)、 パー部材 (18)及びクランプフレーム (17) ( 17A) (17B)によって整列状態に保持された保定具本体 (15A) (15 B)のそれぞれの当接支持面 (12)上にパイプ材 (1)を 1本ずつ載置した後 、 当該パイプ材 (1)の上に別の保定具本体 (15A) (15B)を重ね合わせ 、 下方の保定具本体 (15A) ( 15B) と上方の保定具本体 ( 15A) (15
B)の当接支持面 (12)間にパイプ材 (1)を挾持する。
この積層作業を所定回数繰返した後、 図 1及び図 6のように、 最下段に位置し ているクランプフレーム (17B)に設けられたフック (24)にセッ トポルト ( 19)の下端部のロッ ド ( 19 A)を係止し、 中間のクランプフレーム ( 17 ) のフック (24) と (24)の間にセッ トボルト (19)の中間軸部を挿通し 、 最上段に位置しているクランプフレーム (17A)に設けられたガイ ドブレー ト (27)の挿通孔 (26)にセッ トボルト (19)の上端部を挿通し、 この上 端部にナツ ト (20)を締込むことによって、 保定具本体 (15A) (15B) を上下方向に緊締する。
セッ トボルト (19) として図 1 (A)に示す具体例ではフック (24) との 係合部材として下端にロッ ド (19A)を溶接した T字ボル トが使用されている が、 フック (24)及びガイ ドプレー ト (27)への組付けが可能な限り T字ボ ルト以外の締付け手段の使用も可能である。 また最上段のクランプフレーム (1 7 A)に代えて上下反転させたクランプフレーム (17B) を用い、 上下のフッ ク (24)を針金、 ワイヤなどで緊締することも可能である。
第 2実施例においては、 図 1乃至図 5に示すようにパイプ材 (1)の軸線方向 に沿って左右に 2分割された保定具本体 (15A) (15B)の間に、 当接支持 面 ( 12B)の高さを保定具本体 ( 15A) ( 15 B)側の当接支持面 ( 12) の水平部分 ( 12 A) と略面一状態に保持し、 かつ、 パー部材 (18)に対する 係合部位 (28)の配設位置を保定具本体 (15A) (15B)側に設けられた バー部材用係合部位 (14A) (14B)の配設位置に合致させたスぺーサ部材 (25)を配置している。
図 5に示すように保定具本体 (15A) (15B)の長手方向に沿って測った スぺーサ部材 (25)の幅寸法 Wを変化させることによって、 パイプ材 (1)の 径寸法 Rl、 R2、 が変化した場合にも、 上下の保定具本体 (15A) ( 15B)間に挾持されたパイプ材 (1)に所定の締付け圧力が作用し、 安定した 嵌着支持姿勢が付与される。
2個 1組に対設された保定具本体 ( 15 A) ( 15B)の間にパイプ材 ( 1) の直径変化に対応する寸法調節手段としてスぺーサ部材 (25)が配置されてい
る点を除き、 第 2実施例に記載したパイプ材 (1) の保定具 (10)の構成と使 用方法は既述の第 1実施例と同様である。
パイプ材 (1)の位置決め固定機能を高めるためには、 当該パイプ材 (1)の 外周壁面を保定具本体 ( 15 A) (15B)の傾斜部 (11 A) (11B)並び に保定具本体 (15A) (15B)の底端部に形成されている水平な当接支持面 (12 A)およびスぺーサ部材 (25)の表面に形成されている当接支持面 (1 2B)を併用して、 3点支持方式で支持することが好ましい。 この目的を達成す るため、 パイプ材 (1)の管径が変化した場合に、 変形例として傾斜部 (11A ) (11B)の傾斜角度や対向間隔を調整することも可能である。 いずれの実施 例においても、 保定具本体 (15A) (15B) とスぺーサ部材 (25)を廃棄 プラスチックの再生品とすることによって、 比較的低コス トでパイプ材 ( 1 ) の 管径変化に対応し得る保定具 (10)が提供される。 また使用後の保定具本体 ( 15A) (15 B) とスぺーサ部材 (25)は、 バー部材 (18)などの他の鉄 製部品と完全に分離できるため、 これらを溶融又は粉砕して同種のパイプ保定具 ないし他のプラスチック製品の素材として再利用可能である。
図 3 (A) 図 4及び図 5は本発明の第 3実施例を説明するものであって、 保 定具本体 (15A) (15B)及びスぺーサ部材 (25)の上面と下面のいずれ か一方に、 パイプ材 (1)の当接支持面 ( 12 A) (12B)が形成されている 。 なお、 この場合の係合部位 ( 14B) (28)は凸状のものに限られる。 その 他の保定具 (10)の構成並びに使用手順は図 1及び図 2に示す第 1実施例及び 第 2実施例と同様である。
上面と下面のいずれか一方に当接支持面 (12A) (12B)を形成している 保定具本体 (15A) (15B)及びスぺーサ部材 (25)は、 これらを上下一 対とし上下に隣接した係合部位 (14B) と (14B)ないし係合部位 (28) と (28)を、 パー部材 (18)のコ字状溝内に抱持して一体形の保定具本体 ( 15 A) ( 15 B)及びスぺーサ部材 (25) とする。 これは保定具本体 ( 15 A) (15B)及びスぺーサ部材 (25)の最小単位を小さくし再生処理等に好 都合とするためである。 また図 3 (A) , 図 4及び図 5のような半割りの保定具 本体 ( 15A) (15B)及びスぺーサ部材 (25)を、 保定具 (10)の組立
時に最下部と最上部に使用することもでき、 これにより最下部が平らになって安 定性が向上し、 最上部では無用な出っ張りをなくすことができる。
なお前記第 1乃至第 3実施例において、 参照番号 (30)は保定具本体 ( 15 A) (15B)のパイプ材(1)支持面(11 A) (11 B)に設けられたパイ プずれ防止突起条を示す。